どうぐやコラム
鋏を出張買取していますが、鋏っていろいろあるんです。
いやぁ、鋏の世界は奥深いです。今、私たちが「鋏」と聞いて思い浮かべるのは、明治以降の鋏です。それまでは握り鋏といって、糸切り鋏といえば思い浮かべてもらえる形状のものが普通でした。諸説はありますが、刃物がペアになってカシメが支点になっている「X」の字のような形状になったのは明治以降です。青森にはりんご鋏がありますし、千葉県の五井にも廃刀令以降、砂浜に落ちていた洋鋏をならって作ってみたという話があります。
切る対象もさまざまです。私たちが想像しやすいのは紙や布を切る鋏でしょうか。紙の鋏は文具ですが布を切る鋏はラシャ鋏として知られています。木を切るのは植木鋏や剪定鋏ですし、金属を切る金切鋏もあれば、食用の肉を切るための鋏もあります。いやぁ、鋏って人類の叡智ですね。ここで出張買取の側の話をさせていただくと、けっこう査定が大変なのです。それぞれのジャンルに第一人者がいますし、誰が素晴らしいなんて決めることが難しいぐらい、それぞれの名人ががんばっています。
たとえば有名な鋏ってどんなのがあるの?というと。
ラシャ鋏なら、たとえば六代目・石塚祥二朗さんの鋏なんてすごいなと思いますし、植木鋏なら京都の口清さんとか、もう「あわわわわ」というレベルです。野中さん(大徳寺)や大隈さん(安広)も素晴らしい鋏を作っておられ、プロ御用達です。剪定鋏なら、阿武隈川さんとか村久さん、飛庄さんもありますし、あらゆる鋏の分野にも素晴らしい先人たちが作った道具がまだ眠っています。これらの鋏を望んでいる人につないでいくのがHelloToolsの役目です。
鋏って作るのが大変なのです。いや、すごいですよ。
鋏の鍛冶屋さんがぼやく言葉があります。「普通の刃物はひとつでいいけど、鋏はふたつなんだよ。しかも、左右のペアがご機嫌でなくてはいけない」ということをよく言われます。聞けばそのとおりですよね。右と左の刃物のペアがひとつになって鋏になります。で、一昔前に言われていたのは、「植木鋏の価格は、植木の職人の1日の手間賃」というもの。でも、今の物価や材料費と燃料費を考えると、もうこの価格設定では難しいのだろうなと思います。実際に、刃物や鋏の値段はここ数年でかなり上がりました。
刃物が少しわかってくると、なお作るのが大変だと思うのが、切断する場所が常に点で移動していることです。双方の刃には微妙なひねりが加えられているから、常に刃と刃が接触する場所が点になります。すごい工夫です。
単純に、まだ見ぬ鋏に興味があります。
鋏は本当に面白いです。そして、出張買取に行くと蔵の中には見たことがない鋏が眠っていたこともあります。以前、蔵全体の出張買取のご依頼がありましたが、たくさんの買取品の中に種子鋏がありました。名前の通り種子島に伝わった鋏で、同じ時期に伝わったのは火縄銃という逸品。銘が不鮮明だったので判断しづらかったのですが、使いたい人がいると知人から聞いたことがあったので買取となりました。
私たちの背中を押したのは、知人からの情報以上に、「まだ見たことがない鋏」と出会ってしまった事実です。これは残さねばならないと感じました。常になんらかの形で地域の文化や歴史と関われることが私たちのモチベーションになっています。
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